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更新日記2013.08.02

更新日記2013.08.02

 カート・ヴォネガットの伝記『人生なんて、そんなものさ』で、いちばん感動的だったエピソードは、ホセ・ドノソとの交友だ。
 出した本は一冊を除いてすべて絶版。食いつめたヴォネガットが大学の創作講座に避難した時期のことだった。教師仲間のドノソは、後にラテンアメリカ文学ブームの時代の中心となる傑作『夜のみだらな鳥』完成の直前にありながら、同作を放擲したいという衝動に苦しめられていた。10年の歳月を執筆に費やして、ドノソは、これはありふれた苦悩だとはいえ、まったくの迷路にはまりこみ、自信を喪失し、自作への嫌悪に七転八倒していた。
 あの名状しがたいグロテスク・リアリズムの世界の怖ろしさに、作者自身がまっさきに意気阻喪してしまっていた。それはありうる事態かもしれない。ドノソが遠い北アメリカの地で、このような苦境を経験していたとは知らなかった。
 相談を受けたヴォネガットは、もちろんドノソを力づけた。作品を破棄するだって? 冗談じゃない。
 こういうさいの助言がどれほど書き手を勇気づけるか。作家のみが知る秘儀かもしれない。ヴォネガットは、その数年後、『スローターハウス5』で大成功をおさめる。『夜のみだらな鳥』も一年後に刊行され、世界文学に不朽の位置をしめることになる。
 ヴォネガットの伝記タイトル『And So It Goes』は、もちろん、彼の決め台詞「そういうことだ」にちなんでいる。「それが人生さ」という直接的な言い回しは、伝記に引用されたヴォネガットの私信に一回だけ出てくる。
 思い出してみると、「それが人生だ」という地口は、少し前のゴダール映画でさかんに使われていたわけだった。「セ・ラ・ヴィ」。フランス語の響きだから値打ちがあがるのかもしれない。かなり以前に『軽蔑』を観たとき、英語版だったので、バルドーの「that’s Life」で興ざめしたのを憶えている。しかし「それが人生だ」のモトは、モラヴィアによる『軽蔑』の原作からきている。モラヴィア小説は、いかにもゴダール好みの世界なんだが、そのままではちょっと地味すぎる心理小説に終始している。ゴダール映画は、それを少し配列しなおすだけで、スペクタクルな見世物にリニューアルできることを示した。そこには、『気狂いピエロ』も『ウィークエンド』も、充分に予感されていた。


 XPのご臨終も近いので、リナックス移行を本格的に画策している最中。
 今のところ、Voyager(フランス版のUbuntu)と Zorin7 のデュアル・ブート。ウィンドウズとの共用はしない。絶対にしない。
 Linux Mint を使ってみたけれど、どうも不安定なので、上の二本でいくことにした。
 リナックスのソフトでいちおしは Amarok だ。たいていの曲で歌詞が出てくる。この手のアプリはモバイル専用かと思っていた。PC用もあったので感激。Amarok はウインドウズ用もあるけれど、やはりリナックスで使うほうがいい。

 そのついでに、Billboad.fm のサイトを見つけた。これは、過去半世紀強のアメリカン・ポップス聞き放題のページ。

 先日、Radio sure というインターネットラジオのアプリを入れたさいに、極悪のアド・ウェアが二つも勝手に入りこんでしまった。ブラウザ・ページに危険なポップがどんどん開けてくるので焦った。これらをきれいに掃除するのに、いろいろ調べ、ずいぶんと面倒な作業をする破目になった。

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