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2007年の3冊 n

2007年の3冊 n

アレクサンドルⅡ世暗殺 上下 エドワード・ラジンスキー 望月哲男、久野康彦訳 (日本放送出版協会・各2300円)
リトビネンコ暗殺 アレックス・ゴールドファーブ&マリーナ・リトビネンコ 加賀山卓朗訳 (早川書房・1900円)
近代ヤクザ肯定論 山口組の90年 宮崎学 (筑摩書房・1900円)

 

期せずして、暗殺秘録が二つ並んだ。一方は19世紀末、他方は現在。テロの対象になった標的も、支配体制の頂点に君臨する人物と亡命した元現場工作員。①は講談風歴史読み物、②はスパイ小説風ドキュメントと、タッチも対照的だ。
共通するのは、ロシアという特殊な風土における権力システムの興亡への尽きない興味だ。いや、これは21世紀という苛酷な時代の「普遍」なのかも。それにしても、晩年のドストエフスキーの住居の隣人にテログループがいたという、①の調査は驚きだった。
③は著者の代表作になるだろう。その特異な共同体論への賛否はともあれ。

日本経済新聞2007.12.30
 

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