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2008年終わりのあいさつ 近凶

2008年終わりのあいさつ 近凶

 先日、イヤーフォンを耳につめてチャリンコで走っていたら、制服に拘束された。えっ、もう法制化されてたんですかっ。知らぬ存ぜぬこととはいえ、面目ありません。ひたすら陳謝して許してもらった。
 凶事はつづくもの。帰ってパソコンを覗くと、プロバイダからの警告メールが入っている。規約110番なる部署から。「公開前の某映像作品が貴殿のPCからダウンロードされておるが、その行為は重大な知的財産権侵害にあたる。ついては貴殿のウェブ・ライフの日常的詳細を当局に報告し、もって猛省の念を表明することに替えよ」と――。まいったね。
 香港では、製作会社が某新作のダウンロード・ユーザー数千人を特定し、損害賠償請求を起した、という。日本でも、アンジョリの『ウォンテッド』データをアップロード(トレント・ファイルだと思う)した奴が逮捕された。気をつけましょう。当節流行の見せしめタイホで手錠を掛けられたりしたら恰好つかないもんな。
 このところ、旧作映画をインターネットで捜すのが病みつきになってしまった。調べてみればじつにいろいろある。ジャンルをしぼったほうが捜しやすいこともあり、ひとまず西部劇ばかり漁っている。よく識られているサイトで未公開作品をいくつか発見した。
 そのうち一作だけ紹介すると『ブーツ・ヒル』。マカロニ・ウェスタン・コメディの「トリニティ・トリロジー」で有名なテレンス・ヒルとバド・スペンサーの共演。二人ともアメリカ風の芸名だが、イタリア人スターだ。「トリニティ・シリーズ」の第一作目は日本公開タイトルが『風来坊/花と夕日とライフルと……』。悪役のファーリー・グレンジャー(ハリウッドからの出稼ぎ)が、馬に乗るのもヨッコラショの頼りなさで、なんとも物足りないのが惜しい。二作目は未公開で、ТV放映のみのヴィデオ発売。『ブーツ・ヒル』はシリーズに先立った作品なのだが、サブタイトルに「トリニティ・ライド・アゲイン」となっていて、ややこしい。トリニティとバンビーノの乞食スタイルではなかった。何でもかんでも「ジャンゴ」だった時期があったのと同じで、テレンス・ヒル=トリニティということか。『ブーツ・ヒル』には、『バファロー大隊』のウッディ・ストロードや『何がジェーンに起こったか』のヴィクター・ブオノも出ている。

 しかし、画質はイマイチです。サイトを経由するのだから仕方がない。モニターのフルスクリーン・モードにすると、粗くてとても観ていられない。マカロニは英語版が主流だから字幕もつかないし。動画フォーマットの変換を試みたりしたが、元ファイル以上にはアップグレードできない理屈だ。やり方はあるのかもしれないが、当方のスキルでは無理。まあ、贅沢をいえばきりがない。清く正しく順法的に鑑賞しろってことだろう。
 他に、タイトルも知らない旧作(もちろんモノクロ)がずらっとリストアップされているサイトも見つけた。とはいえ、あれやこれやで、とても観るのが追いつかない。貯めておいて、いずれ、老後の愉しみに……。
 いや、もうすでに、老後か。

日本推理作家協会会報2009.1

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