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各種アンケート2008

各種アンケート2008

inpocket文庫ベスト

①  深海のYrr
②   セル
③  狂犬は眠らない
④  変わらぬ哀しみ
⑤  フロスト気質

 大作好みのような結果になった。
復刊も新訳も各種フュージョン系の健闘も、
とりあえず横に置くと、こうなる。
十年前のも混じっているが、
翻訳の遅れということで……。
次点は、塀の中で材料を仕込んだ
『プリズン・ストーリー』。
映画館入場券が「野口さん」一枚で
済むようになったせいなのかどうか、
ハリウッド新作にはついていけなくなってきた。
せめて小説の新作ぐらいは、
取り残されることのないように。

本格ミステリ・ベスト
海外
①ロジャー・マーガロイドのしわざ ギルバート・アデア
②検死審問 パーシヴァル・ワイルド
③ライノクス殺人事件 フィリップ・マクドナルド
④ウォリス家の殺人 D・M・デイヴァイン
⑤グリンドルの悪魔 パトリック・クェンティン

 旧作主体という結果になってしまったのは何とも面目ない。
それにしても、昨今の復刊の顔ぶれも、
ジョン・コリアをはじめ、カーシュ、ハートリー、パウエルと、奇妙な味派ばかり。
G・ミッチェルなんかも、点数が増えるにつれ、ますます正統離れが鮮明になってくるし。
 『ポジオリ教授の冒険』の中編「つきまとう影」に驚愕。
小栗虫太郎の「白蟻」と同時期・同趣向の二重存在トリックではないか。
あまりぶっ飛びすぎて理解されなかったんだろう。
でも、この本は、十一月奥付けなので来年まわしか。
ミステリマガジン ベスト3 海外
① ザ・ロード コーマック・マッカーシー
② セル スティーヴン・キング
③ 狂犬は眠らない ジェイムズ・グレイディ

 ① 余分なものは何もなく。
 ② キングス・レガシーのチープな
馬鹿っぽさが全開で気に入った。
 ③ 七〇年代ロックと精神破壊とスパイ活劇。
結びつくはずのない要素を結合する強引さに感動。
 グーグルのストリートヴューをネタにだれか
素敵なストーリーをつくらないだろうか。
ストーカーはインターネット世界に
越境する? さる本で読んだ「プラネット・グーグルの植民地政策の次のターゲットは何か」という一節が気にかかる。
ミステリマガジン ベスト3 日本


① 傷だらけの天使 矢作俊彦
② 紅蓮 村中豊
③ 夜に目醒めよ 梁石日

 ① 往年の人気テレビドラマの活字リメイクと思わせて、中身は見事に「矢作アゲイン」。
ベスト・ショットだ。
 ② 粗い世界だが、第一作にしか望めない濃密さに打たれた。
①にも共通するのは、アウトロウの心意気とサイバー・テロのイメージが交差して、
驚くべき「洞察」を示すシーンだ。
 ③ 作者の一連の在日ノワールの一作。

週刊文春ベスト5


国内
①『傷だらけの天使』矢作俊彦
 矢作アゲインのベスト。
②『紅蓮』村中豊
③『夜に目醒めよ』梁石日
④『ベイジン』真山仁
⑤『TOKYO BLACKOUT』福田和代


国外
①『ザ・ロード』コーマック・マッカーシー
②『セル』スティーヴン・キング
 キング一流のチープな馬鹿っぽさ全開。
③『狂犬は眠らない』ジェイムズ・グレイディ
 スパイ活劇版『カッコーの巣の上で』
④『運命の日』デニス・ルヘイン
⑤『変わらぬ哀しみは』ジョージ・P・ペレケーノス


SFマガジン ベスト 海外
①『ザ・ロード』コーマック・マッカーシー
②『深海のYrr』フランク・シェッツィング
③『セル』スティーヴン・キング
④『ザ・テラー』ダン・シモンズ
⑤『20世紀の幽霊たち』ジョー・ヒル

 この既視感は何なのか。『ザ・ロード』の父子の物語に、「ボビー・コンロイ、死者の国より帰る」(『20世紀の幽霊たち』の一篇)が重なり、
絡まりあう。後者は、ロメロ&サヴィーニの「ザ・デッド」の撮影現場に降り立った青春ロマン。
時の流れは作者の手の内でフリーズドライに玩ばれる。そう想って、ロメロの新作『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』を観る。ゾンビの時代が逆巻き、錯綜し、捩じれて……。

国内
『セメント樽の中の手紙』葉山嘉樹 角川文庫
 申しわけないが、ひとえに当方の怠慢を示し、この一点しか挙げられない。
 呪われた作家葉山には、この復刻短篇集以外にも、
モダンホラー的秀作がまだまだあるのだが、それはさておき、
プロレタリアへの野蛮な圧殺が復活しつつある『蟹工船』ブームの昨今、時の流れは凍結し、時代そのものがハードSFに永劫回帰していくかのようだ。

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