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一年が一ヵ月短くなったような

一年が一ヵ月短くなったような

近況というと病院の話をとくとくとすることになる。自慢話にも事欠いて、というやつである。
というか、他にネタがないんですな。情けないことにわたしの2001年10月のカレンダーはすべて真っ白になっている。一ヵ月の入院。予定(といっても大したものはなかったけど)は全部キャンセル、なすすべもなく病院のベッドに縛りつけられていた。「縛りつけられていた」というのは比喩じゃなく、月の前半にはまさに現実だった。
さてこの病状記をホームページに連載することにした。するとです。連載を始めてから心持ちHPへのアクセス数が増えて(?)いるようなのだ。病気の打ち明け話には二種類あって、その大部分はグチに終始する。そのレベルをなかなか超えられない。あまりレベルが高いと病気自慢の域を通り越して死んでしまうからでもある。病気のみで多くの人の関心をひくのは難事業だ。自分でいうのもナンだが、わたしが体験した奇病は自慢する値打ち充分なんである。あえてささやかなHPに公開することに踏み切ったわけで、その結果、わたしの不幸と苦境とを楽しんで読んでくれる人が増えつつあるのは、気分のいいものだ。
それに――生来の貧乏人根性というか、わたしはモトをとりたかったのである。せっかく、もう少しで「三途の河を渡る」ところまで行ったのだ。そのライヴ風の中継を書かないで済ますのもなんだか勿体ないじゃないか。こう思った次第。
そのことによって、棒にふった一ヵ月をいくらかでも取りもどせるかと――取りもどせないよな――空しく望みながら。

日本推理作家協会報 2002.1

 

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