ランキング2020
ミステリマガジン2020.1
①ザ・ボーダー ドン・ウィンズロウ
②ブルーバード、ブルーバード アッティカ・ロック
③終焉の日 ビクトル・デル・アルボル
④刑罰 フェルディナント・フォン・シーラッハ
⑤狙撃手のゲーム スティーヴン・ハンター
⑥危険な弁護士 ジョン・グリシャム
⑦訴訟王エジソンの標的 グレアム・ムーア
⑧ディオゲネス変奏曲 陳浩基
⑨大統領失踪 ビル・クリントン、ジェイムズ・パタースン
⑩七つの殺人に関する簡潔な記録 マーロン・ジェイムズ
ウィンズロウの新作は、リアル世界がフィクションの壁(ボーダー)を壊してしまったことを告げる「記念碑的作品」だろうか。なにしろ「あの野郎」がホワイトハウス入りして、アメリカを麻薬カルテルに売り渡した、と断定しているのだから。小説にかぎってみても、現政権がこれほどまでに激しく攻撃されるケース(作品テーマと不可分の強さをもって)には、初めてお目にかかる。いや、この種の傾向は、これからもっと目立ってくるような気もする。
ハンターの新作でのあつかいをみても、同様の感想をいだく。未読の方には失礼だが、てっきり「あの野郎」を標的にしたスナイパー・アクションだと期待して前半を読んだのだが、後半は……。まあ、標的にするにも値しない、という展開になって、「奴」は「モーグル」の符牒で呼ばれるだけの端役になる。マイケル・ムーアは「奴」の映像を最大限に露出させ、コケにしまくり、「????帝国」崩壊をうたったけれど、結果は、「あの野郎」のコマーシャル・フィルムみたい(やりたい放題の悪のヒーロー?)にも観れる作品になってしまった。
黄昏のアメリカは、まだまだ続く。
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