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更新日記2014.03.10

更新日記2014.03.10

 トニ・モリスン『ホーム』早川書房
 ガヤトリ・スピヴァク『いくつもの声』人文書院
 トリン・T・ミンハ『ここのなかの何処かへ 移住・難民・境界的出来事』平凡社

 以上を並べて、さて読もうと思ったら、

 天野恵一ひさしぶりの本『災後論』インパクト出版会
がとどいた。タイトルに仰天。中味はとにかく。
 まさか、サイゴの著作じゃねーよな、アマノ?


 今の時代は、小型で、持ち運びが利き、移動可能で、ライトブルーの衣をつけた〈私〉そのものである。旧時代的な領土的権力〈テリトリアルパワー〉から近代の生権力〈バイオパワー〉への移行、および、それに伴うグローバル化の波は実質的境界の消失という現象を生み出しており、それが境界を克服するものとして賞賛されている。地球は緊密な結びつきをもつ村〈ウィレッジ〉、あるいは、新たなる不均等性を宿す首都〈メトロポリス〉として呼び起こされるようになっている。にもかかわらず、世界政治のどの舞台でも喧しく論じられているのが、閉鎖や行動の制限、境界の再強化、新たなる垣根の建設、より多くの検問所の設置、安全地帯の強化、もしくは塀に守られたコミュニティの構築などだ。さらに悪質に思えるのが、一国全体を制限された領域に閉じ込めるといった風潮である。…(中略)…。動くな、閉鎖せよ、そして排除せよ。だが、さらに重要なのは、分割し、従属させ、制御するということだ。言い換えれば、自由を奪い、目を塞ぎ、封じ込め、壁で囲むということだ。
 そのようにグローバルな恐怖の時代にあっては、極端な反応が呼び起こされる。つまり、世界中の人々が故国の安全のためと称して建てられた鉄条網内に終生閉じ込められる、といった刑に処せられるということだ。

トリン・T・ミンハ『ここのなかの何処かへ』 小林富久子訳 平凡社 2014.1 19p
Trin T. Minh-ha Elsewhere, Within Here

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