更新日誌2009.09.15
観落としていたらしい『ダーク・スティール Dark Blue』(02 未公開)をレンタルしてきたところ、途中で、どう考えてもよく似た話があったなと気づき、一度観たのを忘れ果てまた借りてきてしまったかと、焦った。だが、何のことはない。
これは『フェイク・シティ Street Kings』(08)と同じ、ジェイムズ・エルロイの原作。その焼き直し、じゃなかった。順番からいえば、『フェイク…』のほうが『ダーク…』の焼き直しなんであった。リメイクとも少し違う。
ストーリーを追っかけるアングルが変わるだけで、同じ話を使い回したというのか。つまり、警察幹部が自分の情報屋を使ってワルサをして大金を着服、おまけに別の犯人をデッチアゲ、部下に射殺させ、証拠の隠滅をはかる。あまりのやりたい放題に、悪事の片棒をかついでいたヒーローがついに正義にメザメルって展開。
いかにも「ギャング・イン・ブルー」(警官のこと)の列伝作者エルロイらしい話だが。
これの原作はあったかどうか。調べるのが面倒なので、保留にする。『L.A.コンフィデンシャル』のメイン・ストーリーもそうだったかと思い出す。しかしこの手の話、骨組だけ取り出すと、殺伐としていて面白味に欠ける。上層部の腐敗と裏切りというトーンだけが浮き上がり、どこまでいっても凡庸で陳腐だ。
エルロイ印のえげつない人種差別主義は映画的には中和するしかないんだろうが、そうすると、ただの陰惨なワルデコものに終わってしまう。醜悪さだけは、まさにエルロイ的だけど。
その点、『ダーク…』と『フェイク…』は、どっちもどっちもだ。片方がカート・ラッセル&ヴィング・レイムズ、片方がキアヌ・リーヴス&フォレスト・ウィテカーと、白人・黒人のコンビでバランスを取っている(あとの配役は、わりとテキトー)ところも相似する。そのはずで、『フェイク…』の監督は、『ダーク…』の脚本家のデヴィッド・エアー。リストを調べたら、『トレーニング・デイ』(01 これは傑作)の脚本、『バッドタイム』(05 製作・脚本・監督第一作 これは退屈)などがあった。だから『フェイク…』は一種の再戦、エルロイ色から離れようとする試みだろう。大いに結構。けれど、肝腎の役者がねえ……。
さて、『ダーク・スティール』の観どころは、これも際物みたいなもんだが、ロス暴動をストーリーの背景に組みこんだこと。ロドニー・キング事件の判決を前にした数日の事件。暴行者の無罪判決が出て、暴動が起こる。ヒーローが容疑者を追いつめる現場が震源地のサウス・セントラルだった。
そこで、カート・ラッセルが言う。おれたちみたいなクソッタレ刑事がこの街を廃墟にする元凶なんだ、とか。
まあ、悪人が中途半端な正義感になって落着、という定石にのっとったわけだ。
ウォンボーにしろ、エルロイにしろ、都市暴動は、警察小説にとって避けて通ることのできないテーマであるしかなかった。映画にすればこの程度。とはいえ、『ダーク・スティール』は記憶に値する作品ではあった。
Share this content:
コメントを送信