更新日誌2009.08.01
『ロボトミスト』という本。なんと、サブタイトルは「3400回ロボトミー手術を行った医師の栄光と失墜」。
多少とも生真面目な問題意識をもって読みはじめたつもりだったが。
途中で、ウーン、こりゃおそれいった「トンデモ本」だと感じてしまった。
投げ出したわけじゃなく、興味の重心がずれてしまい、中ほどからは「鬼畜系ホラーSF」みたいなノリでしか読めなくなった。だれの所為なのかね。
んな感じで、ゾクゾクしながら読んだ。内容をきちんと読み取ったという自信は完璧にナシ。
興味がスイッチ・オフになってしまったきっかけは、半分過ぎのところか。「手術」にあたって、局部麻酔しかしなかったという箇所。医師は患者と会話をかわしながら「執刀」するんだそうだ。「今きみの前頭葉のシナプスを切断しているところだが、どんな気分かね」とかなんとか。
次に衝撃的だったのは、「経眼窩ロボトミー手術」の実態である。マブタの隙間からアイスピックを突き刺し、ピックの柄をハンマーでガンッと叩きこむ。深さ五センチ。そこで手先を動かして、脳内の病原的シナプスを切除する。手術に熟練したこの医師は、しかも、両手を使って左右双方の外科的処置を同時にやってのけたという。その時間も十分とかからず、手術室でない診療室で行なったという。
医師はフリーマンという名前。ギョロ目眼鏡、口ヒゲ、マスクで隠れているが顎ヒゲ、両側に角みたいに尖った三角帽。本についている「肖像」は、手術中のこの写真いちまいきりだ。読みながら、なんどもページをもどして見返すうちに、ブラックなイメージが肥大していくばかりだった。
ことわっておくが、この本は公平を期した伝記であり、当の人物のおよそ面白味のないプライバシーにも多くの記述を当て、ロボトミー医師を所謂「ヒューマニズム」の観点から裁くようなわかりやすさを狙っているわけではない。批難も支持もひかえ、事実を並べる手法だ。
想像力がぶっ飛んでしまったのは、ひたすら当方の誤爆によります。で、それから。
……読み終わって何日かのあと、奥歯の詰め物がポロリと取れたのである。
かかりつけの歯医者さんに電話すると、ちょうど空いているから直ぐに来たまえ、と。礼を言って受話器をもどしながら、なんだか待ちかまえていたかのような反応に思えて、腕がこわ張った。
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