更新日誌2010.02.01
ジョージ・スタイナーの新著『私の書かなかった本 My Unwritten Books』を、図書館の片隅で見つけた。たぶん、彼の最期の本になりそう。読んで、一言でいえば、失望した。熟読する気には、とてもとても。結局、こんな場処に落ち着いてしまったのか、この人は。
(ユダヤ人の追放とは)何よりもまず、自分自身からの追放である。おそらく、他のいかなる民族、社会、それどころか神話に見られる以上に、ユダヤ人は自分自身に対して異邦人でありうるのだ。世に知られたユダヤ人の流浪とは、探究および不断の内面への旅の寓意的で経験的な表現なのである。ユダヤ人は他人に対して他者である前に、自らに対して他者なのだ。
(131p 大島由紀夫訳)
こういうレトリックなどべつに珍しいものではあるまい。『コメンタリー』のノーマン・ポドレーツなんかが書きそうな言い草だし、あるいは、大昔の『紳士協定』みたいな「ポリティカル・コレクトネス」映画の科白に似たのがあったような気もする。スタイナーの本には見つけたくなかった思考だ。
双葉十三郎が死んだ。1910-2009
子供のころ親しんだ洋画のファン雑誌。『映画の友』だったか『スクリーン』だったか、この人の新作採点表を見るのが愉しみだった。その寸言の面白さを真似てみたいとも思った。
思えば、あれが、映画批評の開眼だったか。
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