更新日記2007.08.01 すべて神の子には翼がある
本書のなかで、わたしは事実とフィクションを完璧なほどにまぜあわせるようつとめたので、いまとなってはだれも――わたし自身でさえも――それらを解きほぐすことはできまい。
これはジョー・ゴアズ『路上の事件』(原題はただの “Cases” )の前書きから。
悪くない言葉だ。
この小説で、自伝的部分といえるのは、十分の一くらいだろうが、許せるハッタリだ。
はたして、わたしは自伝を書けるだろうか。
以前、某W大学の教員紹介ページのアンケートで、「自伝を書くとしたらタイトルは何に」という質問があった。そのときは、
All God’s Chillun Gots Wings
と答えておいたが、
本当に書くことができるだろうか、自伝を。
ゴアズの作品は、ケルアック的に始まって、IWWに転移し、やはりハメット的な迷路に突き進んでいく。同じ路線を、たとえば、クラムリーがやれば、ケル アック+チャンドラー+クラムリー自身という構図になって、内容は、読む前からほぼ見当がついてしまうだろう。その点、ゴアズは混沌としている。
自伝とは最高のフィクションだ。といったのは、だれだったか。
ヘンリー・ミラー? いや、ミラーのは、もうちょっとニュアンスが違ったか。
いずれにせよ、わたしは。
わたしは自伝を書けるだろうか。
Share this content:
コメントを送信