更新日記2003.7.1
「ボルタンスキーを探して」(もとのタイトルは『クリスチャン・Bを探して』)を、ビデオで観る。この人の風貌を見るのは初めてだ。どこか東洋人めいた顔つき。眼鏡を丸型にして、鼻を団子鼻にすれば、坂口安吾にも似ているから驚いた。
すべて贋の言葉で伝記を書くこと。ボルタンスキーがいろいろ言っていたことで、その主張が耳に残った。
ボルタンスキーはとてつもない収集家だ。死者に取り憑かれたようなコレクター。古着の山を集め、その一枚いちまいに着た人の人生の断片が刻みつけられているという。古着はポートレートと同等に展示され、伝記の代替物となる。面白い方法だ。けれどボルタンスキーの展示展は、空間的にずいぶんと贅沢なものにならざるをえないだろう。古着を並べて伝記みたいなものを構成できるかもしれないけれど。
オットー・ペンズラーがジョン・リドリーについてコメントしている雑誌コラムが目についた。チェックしておこう。忘れないように。しかし無理だろう。整理したあとの本棚にリドリーの本は一冊しかなかった。
某日。推協賞のパーティに顔を出してみた。毎年行っているつもりが、数年ぶりだということに気づく。億劫で外に出るのを面倒がっていると、ついついこういう結果になる。どうもいけない。相変わらず盛況だけれど、いつと比べて盛況なのかというと確言できかねることになる。
北村薫氏は、会場でバッティングのパフォーマンス。あれはアリアスあたりだろうか。絶好調の様子である。その理由は言うまでもない。
有栖川有栖氏の受賞あいさつにも、逢坂剛理事長のあいさつにも阪神ネタはたっぷり出てきた。まわりはにわか仕込みの移り気なファンでいっぱいだが、昔からの筋金入りはすこぶる元気だ。
浅暮三文氏は受賞あいさつを大阪漫才風に決めた。受賞作は粘着的な触覚ハードボイルド。いろいろと芸達者な人だ。
新保博久氏の受賞あいさつは、彼らしいおとぼけで爆笑をとっていた。
京極夏彦氏は、ずいぶんとイメージを変えた。今のほうが江戸情緒の貫禄である。
キャラクター・チェンジといえば、二階堂黎人氏も、超短髪とサングラスで格段に恰好よくなった。「007の悪役風だね」と言うと、「0011ナポレオン・ソロだよ」と返ってくる。
真保裕一氏からは、書評のお礼をたまわる。いや、恐縮です。読みこみが外れていなくて幸いであった。
法月綸太郎氏と『ブラッディ・マーダー』について少し話しこんだ。
じつのところこの本の書評を書いたら分量が二倍になってしまって困っているのだ。収まりがつかない。五十枚くらいないと書ききれそうもなかったりして。ビョーキだ。
綾辻行人氏は赤いスニーカーが決まっている。「痩せましたね」と言われたから、勢いで大病の話にきりかわった。山口雅也氏も加わって病気自慢の話題になったわけだ。奇病。このテーマにおいてのみなら、だれが相手であろうと、当然わたしの圧勝になるのである。
そういえば、あちこちで黒眼鏡と髭面が目立つように感じた。ミステリ書きのトレンディだろうか。黒眼鏡はこちらは以前からだけど、髭に関してはまったく太刀打ちできないので、いってみれば羨ましい。髭が生えないことはないにしても、入院を機会に試みに伸ばしてみたら結果はさんざんであったから、その方面はあきらめたのだ。
あとは進行中の仕事の件でいくつか、ついでに打ち合わせをする。
あいさつしなければいけない人をたくさん見落としてしまったかもしれない。あとで声をかけようと思っていたところ見喪ってしまったり、顔と名前が一致せず目があっても戸惑ってしまったり。結果的に、どなたに非礼を重ねているものやら。
評論集のカバーができてきたので、画像をアップしておく。装丁者の名前は次回に書き入れます。
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